生命式;村田沙耶香
人間を体を食すことで弔うというストーリーについていけず、
数ページ読んでギブアップ。
本書自体は短編集であるものの、他の作品も読むことができなかったほど、
心にダメージを受けた。
お探し物は図書室まで;青山美智子
物事の見方、感じ方は、人によってそれぞれ異なるということが
図書館司書搭乗時の様式美として繰り返される。
現状の不満に愚痴をこぼして変わらない毎日に安住するよりは、
些細なことでも、いつもと違う行動をとれば、
たとえそれが後ろを向くようなことであっても、
なりたい自分になるきっかけを得られるかもしれない。
自己啓発本にありふれた
「一歩踏み出そう」とか「きっかけをつかんで人生を良くする」という
押しつけがましいものではなく、
ただただ登場人物の様々な角度からの挑戦(というほどでもない)が
すっと心に入ってくるのがよい。
逆ソクラテス;伊坂幸太郎
小学生を主人公とした短編5作
事実ではない他人からの「決めつけ」や理不尽さにどう対処していくか。
相手にコントロールされない処世術のヒントを多く教えてくれる。
よく「他人の立場に立って考えなさい」と怒られてきたが、
そのこと自体が怒られる側の立場に立ってないわけで、
怒る理由を与えてしまった自分に対して
「正しい立場で」「正当に理由を得て」
行えるストレス発散であったのだろうか。
「お前のために言っている」と怒るのも同様であったのだろうか。
コミュニケーションという点からは、
怒るということは、
相手に怒っていること、危害を加えられる可能性がある、
ということを伝える以外に意味があるのだろうか。
犬がいた季節;伊吹有喜
「犬がいた季節」を読み終えた。
とても懐かしい思いとともに、積極的な描写があふれる日常において、
登場人物の細やかな心の動きが犬の視点で語られる様は
自身の心に潤いを与えてくれるようであった。
詳しいほどではないが見知った土地・地名が登場し、読みやすく、また、
一つの高校を舞台に時間軸が垂直に積みあがっていくことが、
今日も此処以外のどこかで繰り返される日常が存在することを
改めて認識させてくれる。
自分が高校生の頃が思い返され、あの時ああしていれば、
という後悔とはまた別の心地よい感傷に浸らせてくれた。