オペレーションZ;真山仁

財政破綻による国家存亡をかけた

財政の健全化を大胆に進める政治家、官僚の奮闘を描いた作品。

お堅い政治の話のはずですが、臨場感に深く引き込まれていきます。

 

今が大事で未来のことを考えない国民。

自治体を私物化する首長。

自己保身しか考えない政治家・官僚。

スクープを掴むことだけにしか見えないメディア。

 

国家のために国民に不人気な政策を行うたびに政治生命が脅かされるのであれば、

政治家はいったい何のために頑張ればよいのであろうか。

 

なお、江島総理は香川照之で脳内再生されました。

お探し物は図書室まで;青山美智子

物事の見方、感じ方は、人によってそれぞれ異なるということが

図書館司書搭乗時の様式美として繰り返される。

 

現状の不満に愚痴をこぼして変わらない毎日に安住するよりは、

些細なことでも、いつもと違う行動をとれば、

たとえそれが後ろを向くようなことであっても、

なりたい自分になるきっかけを得られるかもしれない。

 

自己啓発本にありふれた

「一歩踏み出そう」とか「きっかけをつかんで人生を良くする」という

押しつけがましいものではなく、

 

ただただ登場人物の様々な角度からの挑戦(というほどでもない)が

すっと心に入ってくるのがよい。

逆ソクラテス;伊坂幸太郎

小学生を主人公とした短編5作

事実ではない他人からの「決めつけ」や理不尽さにどう対処していくか。

相手にコントロールされない処世術のヒントを多く教えてくれる。

 

 

よく「他人の立場に立って考えなさい」と怒られてきたが、

そのこと自体が怒られる側の立場に立ってないわけで、

怒る理由を与えてしまった自分に対して

「正しい立場で」「正当に理由を得て」

行えるストレス発散であったのだろうか。

「お前のために言っている」と怒るのも同様であったのだろうか。

 

コミュニケーションという点からは、

怒るということは、

相手に怒っていること、危害を加えられる可能性がある、

ということを伝える以外に意味があるのだろうか。

犬がいた季節;伊吹有喜

「犬がいた季節」を読み終えた。

 

とても懐かしい思いとともに、積極的な描写があふれる日常において、

登場人物の細やかな心の動きが犬の視点で語られる様は

自身の心に潤いを与えてくれるようであった。

 

詳しいほどではないが見知った土地・地名が登場し、読みやすく、また、

一つの高校を舞台に時間軸が垂直に積みあがっていくことが、

今日も此処以外のどこかで繰り返される日常が存在することを

改めて認識させてくれる。

 

自分が高校生の頃が思い返され、あの時ああしていれば、

という後悔とはまた別の心地よい感傷に浸らせてくれた。